新年度あけましておめでとうございます

フジヤマさんは九州に旅立ち、


北斜面の地面も見え始め、


実習のイグルーも残骸となり、

毎年なにかとさみしいこの時季ですが、

ふきのとうは出始め、

人も自然も、みな動き始めるときでもあります。

本年度も楽しく有意義な年になりますよう。

 2024.04.02 たしろ

森林科学入門 冬の北方林コース

 2月下旬、「森林科学入門 冬の北方林コース」が実施されました。

森林科学入門は基幹教育のプログラムであり、様々な学部に所属する1,2年生が多く参加します。9月に行われた夏のコースでは、森林の中でグループごとに研究テーマを見つけて調査・発表する過程を中心に進みますが、冬のコースはこの季節の北海道ならではの雪や寒さ、冬山などの体験を重視した構成になっていると思います。

毎年参加希望者が殺到する人気のコース。私自身、昔から話には聞いていたものの、参加するのは初めてのことで、とても楽しみにしていました。一方で今年の足寄は(特に実習直前が)過去に経験がないほどの暖冬とのこと。雪もほとんど見えず、予定通りに進められるのか、とても心配されていました。


初日は昼に帯広駅に集合。12人の参加者を乗せてマイクロバスで北海道演習林へ向かいます。車内で自己紹介や事前課題(北海道に関して何か調べてくる)の発表がありました。ほとんどの参加者はお互いに初対面ですが、みんな堂々と話していて感心します。まあもともと積極的な学生だからわざわざ応募して北海道まで来るのですよね。

演習林に到着して早々、イグルー(雪の小屋)を作ります。辛うじて雪が残っていた事務所裏の陰でやることになりました。

まずコンテナ中で雪を踏み固めてブロックを作る
適度に水をかけて固めます

ブロックを地面に丸く並べる
1段目はらせん状にブロックの高さに傾斜をつけます。積み上げていく際、ブロックの高さがずれる方が安定するそう

隙間を塞ぎながら順番に積上げていきます
内に向けて角度をつけるのは少し勇気が必要

夜を挟んで翌日の朝
3班とも無事に完成
このイグルーはまだ事務所の裏に残っています。というか、その後の雪で育っています。
3月1日撮影


2日目は事務所周りで歩くスキーの練習もしつつ、
午後から山に入り、森林調査の方法を学びました。
ミズナラの幹周りを測定

レーザー機器で樹高計測
原理は「対象木までの距離」と「樹冠トップを見上げる角度」と「幹の基部を見下ろす角度」から三角法で求まります
ミズナラ林、カラマツ林の2か所で木のサイズを測定し、森林材積を計算しました。最終日にグループごとに発表予定の課題を考えるのに必要(かもしれない)です。


3日目は読図の実習。地形図とコンパス、そして現地の地形を見比べながら進路を探し、目的地を目指します。スムーズに進めば3, 4 kmの道程のはず。
出発地点で方角を確認
班員で相談して進路を決めていきます
出発地点は各班少しずつ離れていたのですが、早々に同じ地点で合流してしまいました。固まりで歩くようになったら面白くないなと思って見ていましたが、自信を持って全く別の方向に歩きだしました。面白かったです。
まめに地図を確認
結局どの班も第1目的地に到達
お弁当を食べます
ちなみに、この場所は南向きの斜面です。はほぼ雪がありませんね。一方、対岸の北向き斜面を見るとまだ雪で覆われています。
木々の隙間から見える対岸の斜面は真っ白
このように斜面の向きによって環境は大きく異なり、そこに成立する森林も強く影響を受けることがあります(足寄では北向きと南向き斜面で優占する樹種構成が大きく異なる)。この時期、例年だと南向き斜面も雪で覆われているそうで、演習林スタッフは残念そうでしたが、ともあれこの違いをはっきりと視認できて私は良かったです。

昼食後、再び班ごとに出発します。南向き斜面から沢におりてしばらく下り、北斜面を少し登ったところに最終目的地があります。
沢に下りると雪が残ってました

氷細工

最終目的地に到達
雪が増えたし、せっかくなのでスノーシューを履きました
モニタリングサイトの見学

この日はまだ終わりません。このままバスで拓北小屋に移動し、薪を使った暖房・炊事・風呂炊きを体験します。
薪割り
薪ストーブ

炊事(主にT先生)

五右衛門風呂で足湯
希望者は全身浴できますが、うっかりお湯を溢れさせると火が消えて終わります
暖房・炊事・風呂焚きに用いた薪の重量を記録しておきます。これらに用いるエネルギーを薪で賄った時に必要な薪の量を知るためです。
T先生特製カレーを食べる
巨大鍋・巨大羽釜で作ったカレーライスを食べ尽くしたのは初めてとのこと
立派な山小屋ですがここで泊まるわけではなく宿舎に帰ります。


4日目は雌阿寒岳の麓、野中温泉付近からハイキングコースでオンネトーを目指します。

雌阿寒岳は活火山であり、何度も噴火を繰り返しています。山腹の位置によって溶岩が流れた時代が異なり、その後に成立する植生の遷移状態が異なります。その植生遷移の様子を一度に見ることができる貴重な山なのである、というお話がありました。
まず雌阿寒麓の溶岩上に成立したアカエゾマツ林を見学
アカエゾマツは溶岩地など、他の種が入れない貧栄養な場所に最初に侵入するタイプ
スキーを履いて出発
2日目に事務所周りで歩く練習をしました
この歩道も例年に比べて雪が少なく、また全体的に固く凍っているようでした。あまりスキーで歩くのに向いていないのですが(いや素人にはよくわかりませんでしたが)、まあ行けるところまで行ってみようということでスタート。
周りの稚樹の多くはトドマツ
パイオニアのアカエゾマツの次、入れ替わるように優先する樹種
遷移が進むにつれてトドマツ(一番手前の白っぽい幹、たぶん)は大きくなり
ダケカンバ(その左隣り、たぶん)など広葉樹も混じるようになります

やがてオンネトーに到着です。ここも凍ってないのではないかと心配されていましたが、無事に厚い氷で覆われていました。雪がほぼなく、スケートリンクのようにつるつるで、最初はおそるおそる氷上を歩きます。
オンネトーの上で記念写真
雌阿寒岳と阿寒富士がうっすら見えました
互いに足で押し合って滑る遊びが流行る。元気

帰路の雪溜まりでは、雪崩被害を想定した「雪に埋まる」体験、それから「雪の斜面を移動する大変さ」を体験しました。
暗いし苦しかったです
他の班員は声を掛けたり(雪の中にはなかなか届かない)
ゾンデ棒でつついたり
雪斜面を登る
雪が薄かったので結構登れました
そして滑る
みんな3~5往復くらいしてたみたいです。元気

最終日はグループごとのプレゼンテーションの日です。

ここまで遊んでいるだけのように見えたかもしれませんが、実は最初に課題が出され、最終日に発表することが決められていました。今回の体験や調査を通し、また各自で統計資料等を調査し、「社会が木質燃料のみを使用した場合の持続可能性と得失について」考察しなさい、というものです。

スケジュールが割とみっしり詰まった実習期間でしたが、各グループとも夜な夜な、また細かい時間を見つけては作業を進めていたようです。



どの班もびっくりするくらいよく調べ、それをうまくまとめて発表しました。班ごとに着目するポイントが少しずつ違って面白かったです。
参加者のみなさん、お疲れさまでした。これまでに経験のないことがたくさんあった5日間だったのではないでしょうか。仲良くなった友達との縁も続くと良いですね。演習林のことも忘れずに、いつかまた来てください。

今回、暖冬でほとんど何もできないのではないかと心配されていましたが、結果的にはほとんどのことはできたのではないかと思います。良かったです。

私自身は初めてということで、学生と同じ体験をして、しかし研究発表とレポートはやらない、という楽しい立場で参加することができました。ただ、運営する教職員側は、事前の準備や安全管理、当日の進行にも、本当に気を遣うし時間も手間もかかっています。本当にお疲れさまでした。他にない良い実習だと思いますし、次回以降は私も少し貢献できるように頑張れたらいいなあと思いました。

2024.3.5    市橋

暖冬?

 北海道演習林がある足寄町の冬は大変寒いです。今年の冬もマイナス20℃を下回る日が何度かありました。

積雪もあり写真では伝わりにくいと思いますが,撮影日の1月29日はプラス4℃まで気温が上昇し,大変暖かかったです。


建物の北側の屋根からは氷柱が降りてきていますが,


南側の屋根からの氷柱はなく,水滴が落ちています。

これまでの1月のワシップ通信や演習林ホームページの表紙の写真をみると,雪や氷の寒い冬を紹介するものが多いですが,2020年の1月16日の写真

http://www.forest.kyushu-u.ac.jp/hokkaido/index.php?coverphoto2020(これの一番下)

では雪がなかった様子が写されてます。その年はその後実習までには雪が十分に積もったようですが,今年はどうでしょうか。



(2024/01/30 TE)

大山神祭

北海道演習林では、毎年12月に大山神祭を行っています。

山の神様に、今年1年無事に仕事ができたことを感謝し、来年の安全をお願いします。


神事の前に職員と森林インストラクターでしめ縄をつくります。

みんなで協力してあみあみ。

神様へのお供え物

この日は朝から雪がしんしんと降り続けており、神事の最中も乾いた雪が舞い散っていました。

大先輩曰く、「毎年、山の神の日の前後には雪が降っていたが、当日に雪が降るのは初めて」とのこと。




来年も良い一年になりますように。


2023.12.13. fujiyama

境界の確認

九州大学北海道演習林は3,713haの森林面積を有しており、その周囲はおよそ58kmになります。
この58kmが境界になるわけですが、境界の維持管理も演習林の業務の一つです。
今回、実際に現地を歩いて境界の確認を行ってきました。

といっても58kmは長大で一回ですべてを周ることは大変な時間と労力を要します。
北海道演習林では境界を5カ所に区割りし5年かけて全て踏査することとしており、
今年はその1年分およそ14kmの現地確認を行いました。


現地には境界を示す石杭等が設置されています。
地図などで位置を把握しながら、まず境界標を探します。
境界標には「九大」などの文字が彫られています。

境界標の石杭

赤スプレーでマーキング


また境界標の近くに塩ビパイプ等で作製した見出杭が設置されています。
境界標だけではササや落ち葉、土砂の流出などで埋没する恐れがあるため、見出杭を設けて視認しやすくしています。

見出杭がないと石杭が全く見えません
 

既に設置されていますが、紛失や破損の可能性があるため予備の杭をいくつか持って歩きます。

見出杭は長くてかさばって重いです

土砂の崩壊など災害が起きていないかも同時に確認します。今回はそういった箇所は見られませんでした。


地図では平面ですが、実際には尾根谷が続きます。
急傾斜の区間もあり息が切れることもしばしばです。
加えてササの中を歩いているとマダニが足についてきて精神的にも萎えます。
幸い誰も刺されなかったようです。

山あり谷あり
 
倒木を横目に

冬になれば地面がしばれ(凍り)ます。そうなると見出杭が地面にさせなくなります。
夏だと草木が茂り見通しが悪くなります。そして暑いです。
秋の涼しくなって落葉した今頃が境界確認を行うに最適だと感じます。
マダニの活動も落ち着いてくれていればよかったのですが。

左奥にフップシ岳、雌阿寒岳、阿寒富士。右側の雲の付近に足寄市街地が見えます

 

初めて足を運ぶ場所も多く、いろいろと目にすることができました。
また一緒に歩いた古参の先輩方から現地の過去の話を聞けたりと大変貴重な体験でした。



境界確認の作業は他の演習林でも行っています。
ところ変われば違った苦労や感想があるようです。
ブログにもあがっているので、よければ覗いてみてください。


 2023.11.17 ogata